IT組織とプロジェクト

いわゆる『デジタルトランスフォーメーション(DX)』が広く喧伝されたことは、各企業の経営層に自社のIT組織やITオペレーションに意識を向けさせた、という点では価値があったと思われます。DXについて情報システムの責任者と意見交換の場を持たれた経営者の方々は多いと思います。しかし、おそらくそのような場でDXのインパクトや具体的打ち手について腹落ちする説明を受けることにはなかったものと思います。DXという概念自体がいい加減なものですから、それに関する考察が不十分なものと感じられても致し方ありません。むしろ経営がチェックすべきことは、あやふやなDX施策ではなくITオペレーションの実力です。IT部門とのやり取りで、主体性の欠如やシステムの老朽化、セキュリティの脆弱さなどを感じ取られたとしたら、それは看過できません。

IT部門は企業活動の下支えするための機能であり、費用をいかにセーブするかという観点でしか経営は関心を持たなかったというのが、ほとんどの企業の実態でしょう。IT部門は人員削減や分社化、アウトソーシングなどが進み、陣容は弱体化しています。他方、このスリム化でITに関わる費用が削減されているかと言えばそうでもなく、現状維持のための費用は高止まりしています。

経営者が気を配らなくてはいけないのは、DXというようなあやふやな話ではなく、今実際に行われているITオペレーションについてです。